タイトル | : 6-A4-2 収穫の時 |
投稿日 | : 2015/06/27(Sat) 14:15:45 |
投稿者 | : 魔音@GM |
参照先 | : |
> 「アナタ様がエドニ様?」
クロエの問いかけに、男は反応を示さなかったが、窓の外を見遣る姿に、否定の意志は浮かんでこなかった。
> 「ワタクシはクロエ、クロエ・マキュアン。以後、お見知り置きをば。
> さて、単刀直入にお訊きしますわね。
> ヴァーレイト家―――呪われし家系に関する情報を全て」
出し惜しみはせずにね、と付け加えられた言葉に、エドニは目を閉じた。
再び瞼を開いた時、彼の視線はクロエの方に向けられていた。
暗い虚ろな目をしていた。
> 「幸いな事に多くのピースは既に埋まってますの。
> ただし、いまだ欠けたピースが御座いまして」
> 「アナタ様が握るピースは紅蓮に燃えし実なるか、黄金に耀きし実なるか?
> …この際、アナタ様が黒幕でも別段、問題では御座いませんの。
> ワタクシが知りたい事は唯一無二の真実」
やや間があって、
「人間が育てたものだからといって、その実が人間の口に合うものだとはお互い思っていないだろう? クロエ・マキュアン。
ましてや、それが真実であるとしたら」
低い掠れ声で男は言った。目が、少し光を帯びたように見えたのは気の所為だろうか。
「ヴァーレイトの名を求めるからには、私が既にズレッドではないことくらいのことは知っているのだろうね?
私は、エドニ・サンニーム。荘園陵の名を継ぐ者だ」
その唇に、挨拶らしき言葉が浮かんだが、淡々とした口調でクロエの質問に答えた。
「ヴァーレイトは、カーディス女神に魅入られた一族だ。そして、私の妹・アコニがその名を継いでいる。
サンニームからヴァーレイト家へと移ったところで、あの娘は、彼の女神の愛の受難者であることからは逃れられなかったようだ。
グラント・ヴァーレイトは、セータル・ズレッドと共に、野の女神と称するマーファ女神・異端の教えを、この地で具現化させることに心血を注いだ。
彼らは、オランでの闇取引で財を成し、マーファ女神の聖地の一つさえ、一時は手に入れかけた。
それが、彼らの辿り着けた頂だった」
エドニはそう言い終えると、一つ、ゆっくりとした深呼吸をした。
> 「―――――――――そういえば、1ついい忘れた事が…
> 昨日、とある墓にて未知なる敵に襲われたのですが、心当たりとか御座います?
> 取り逃してしまいましてね―――あ、こちらお土産です」
エドニは、震える手でその聖印を愛おしそうに手に取ると、乾いた唇でそっと口づけをした。
「その魔物が、1年前に前領主セータル・ズレッドを襲い、殺害したものと同じであるとしたら、デュラハンだ。
グラント卿の怨念を使った儀式によって呼び出された。というところまでは予想通りかな?
魔物は、彼らが信奉する女神の、本来の意志、即ち終末の時を一番判りやすい形で具現したのだろう……。だが、呼び出した彼らからすれば、散々な結果を迎えた。
かくして、生き残った者たちには、遅れた収穫の期限が迫っているというわけだ」
> 「白銀の髪を持つ者同士、中良くやりましょう…ね?」
何か答えようとしてエドニは顔をしかめ、額を押さえて口を開いた。
「ではそのよしみとやらで、水を一杯とってくれないか?」
どろりとした暗い色に戻った目で、クロエに問いかけた。
すぐ手の届く先だったが、力が出ないのだろうか。
額を押さえるのとはもう一方の震える指先には、水差しと銀の杯があった。
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魔音@GMより:
これがよくある、砕ける波頭の岸壁近くでのやりとりというやつですかっ。
エドニは、黒幕かとなると微妙なんですけど、クロエさんのだいたいの狙いの通り(?)の展開ですね。
というわけで、あれこれ知っていることを話ました。
質問があればお願いします。
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