タイトル | : 7-3-2 祭りの終わり |
投稿日 | : 2015/07/19(Sun) 14:28:13 |
投稿者 | : 魔音@GM |
参照先 | : |
ハトハは急いで帰ることになった。
「うちの急ぎの便がオランに行くから、乗っていって」
シュタールがハトハを見送った。
「また美味しいご飯食べようね、ハトハちゃん」
半エルフの商人は、ハトハを乗せた馬車が見えなくなるまで、華奢な手を振っていた。
◇
祭りが始まるまでの間、アウレリア神殿でエリシアは献身的な働きをした。
その尽力もあって、神殿の動揺はほぼ収まった。
野の女神の中心にいた人間たちは、事件の日を境に姿を消した。
その後の調査から、不死者になって彷徨い、退治されたものが大半で、他には服だけ残っていた者もいた。ミハイの証言から、泥のように溶けた者もあったと考えられたが、初日に会ったパネのように、痕跡も残さず消えた者については消息不明だった。
あるいは、潜入者もいたかもしれなかった。結局神殿は、それ以上の捜索を行わず、希望者を受け入れることにしたのだった。
施療院の者たちは、薬師の他、マーファ以外の神官や、精霊使いといった、様々な治療者たちで構成されていた。
彼らは、今後の運営についても協力的で、新領主、荘園の代官代理を中心に、進められるとのことだった。
エリシアは、その調整の中で、何人かの知り合いを得た。彼らとは、今後何かの折で、再会することになるかもしれない。
メリダをはじめ、管主からも感謝されたものだった。
◇
祭りもたけなわ。広場の大飾りが、盛大な焚き火で燃やされ始めると、広場には白い煙と同時に、独特の香りが漂い始めた。
土地のハーブでも混じっていたのだろう。煙の刺激に、すっと通る清涼感と、少し甘い香りが混じっていた。
人々は、火を囲んで楽器を演奏し、歌い、踊り始めた。
魔術の心得がある者は、多くの祭りがそうであるように、これが古くから続く儀式でもあることに気付いたかも知れない。
実質的な力があるわけではないが、死と再生の祈りがこめられているのだった。
そんな中、冒険者たちの中に、アコニを見た者がいたかも知れない。
アコニは、暫くの間、少し離れて火を見守っていたが、やがて決意したように輪の中へと入っていった。
彼女は、すぐに相手を見つけたようだった。
向かう先に一人の青年がいた。ベイリーだとすぐにわかっただろう。
二人は、喧噪と音楽、たなびく煙の中で、周囲の人々と共に踊り始めた。
バチンと一際大きな火が爆ぜる音が響いたとき、火にくべられた飾りは形を失い、火の粉を散らして最後の炎を吹き上げた。
巻き上げられた火の粉と一緒に、ベイリーはアコニの傍からふわっと浮き上がった。その手には、抜き身の刀が握られていた。
精霊を見る目を持たない者も、この夜ばかりは、様々な姿を煙の中に見たかも知れなかった。
その殆どが、幾つもの光りの玉に、炎の皮を纏う獣や、半透明のエルフのような者たちの姿だった。
ミハイの見たアコニによく似た女性の姿や、一行が倒した騎士、グラスランナーや、領主の姿によく似た老人の姿があったのを見たかも知れない。
彼らは、煙に乗って夜空へと舞い上がっていった。
祭りは終わり、人々が去った後も、暫くの間は煙と、不思議な香りが辺りに漂っていた。
◇
ミハイがギルドを訪れた。
いよう−よう。と、挨拶が交わされた。
> 「あんたに頼まれてたやつ、有耶無耶になっちまったけど、まあ、解決したみてえだし、あれでいいな?」
「謙遜するなよ、ミハイ。
有耶無耶どころか、オランのギルドもご満足らしいぜ」
> 「しばらく世話になるぜ、ギルドマスター。
> 半年か、長くて一年くらいだと思うけどな」
「そりゃいいね。しばらくはうちの客が一人増えるって訳か」
> 「とりあえず、ショットで一杯くれよ。
> あんたにも」
「霧の英雄様の一杯となれば、ご相伴にあずかるしかねぇな。
おっと。もう一人おいでなすった……」
そこに、ナイスタイミングでストレイがやってきた。
> 「すまねぇ。バタバタして挨拶が遅れちまった。
> オランの野良犬だ」
「よお野良犬、大活躍だったって話じゃねぇか」
マスターが挨拶を返した。
> 「ミハイ、こっちに残るんだって?
>
> あ、俺も同じもの1杯」
「あいよ」
ストレイの分もグラスを出して、チーズや干し肉といった、簡単なあての入った皿を出した。
> 「オートマタって名乗るヤツを見かけたら、俺はオランにいるって伝えてくれ」
「いいぜ。あいつがこの街に戻ってきたときは、伝えておくさ」
マスターのサレムがうけおった。
> カンパーイ。
> 「自由に」
「乾杯」
ミハイの音頭で、ささやかな酒宴がはじまった。
◇
オゴフを出発する日、
「エリシアさん、おかげさまで今年は良いものができました」
管主からは、杏のジャムが手渡された。
メリダが見送りにやってきて、ハグと共に暫しの別れを告げた。
「手紙書くね」
色々あった所為か、笑ってはいても、声を震るわせたメリダの目から、一筋の涙が頬を伝って流れ、エリシアを送り出した。
◇
ミハイが当面の塒に。と、準備されたアパートは、歓楽街のはずれにある、マンションの一室だった。
分厚い壁でできた3階建ての建物は、元はファリスの神殿だったとのことだったが、維持できずに地元の人間に売却され、改築されて現在に至っているとのことだった。
ミハイが扉を開けると、ひとの気配があった。
そこにはデイジーが立っていて、
「あたいも……、したから」
消え入りそうな声だったが、
「あんたとしばらく残ってやる」
顔を上げると、そう宣言した。
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魔音@GMより:
>柑橘さん
ハトハっちせふせふだったww
>ゆきふぇるさん
エリーの貢献と、その後をプチっと。ささやかなおみやげが出たという話でした。
>たいまんさん
ギャハハ。FF9の女王っ。もちろんダガータソではなく(
ブラネ陛下とか、ジャバザハット(スターウォーズ)、マツ●DXさんあたりでしょうか。
&押しかけ女房の襲来をどぞぞというヲチでした(爆)
>平賀さん
修正ありがたたでした。
しょんぼりスペクターのベイリーは、なんとか成仏した感じです。
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