タイトル | : 6-B0-1 城館 |
投稿日 | : 2015/06/18(Thu) 09:24:12 |
投稿者 | : 魔音@GM |
参照先 | : |
宿場街から橋を越え、オゴフの住民たちが住む丘の登り坂を、ハトハとラキアード、アコニとシュタールを乗せる馬車は登っていく。
城館の丘は、霧と、どこかおかしな雰囲気に包まれている。
旧市街は、宿屋街ほどの活気はない。しかし、閑静な雰囲気は、新市街と好対照を成している。と、少なくとも、一連の事件がなければ、一行の目にそう写ったはずだったであろう。
どこかおかしい。というのは、冒険者としての勘に訴えるものだろうか。
閉じた扉、窓の隙間から、気配を潜めた住人たちの息づかいが聞こえてきそうだ。
◆
一行は、城館の周囲を巡る空堀の手前で神殿の紹介状を示すと、実戦的な武装をした衛士により、城館に招き入れられた。
街で見かけた衛視たちとは、鎧の上に纏ったサーコートの色が異なっているようだった。街の衛視たちは灰色。城館の衛視たちは、デザインは同じだが、紺色の羽織となっている。
そう思って眺めてみると、衛視たちは各々が綺麗に身繕いしていて、統一感が損なわれない程度に、お仕着せを各々がアレンジしているのが判った。そのセンスは洗練されたもので、過度な威圧を伴わない重みを見た者に与える。
案内をする衛視たちは、沈黙を保ち、兜を深くかぶって冒険者たちとはなるべく目を合わせないようにしているように見えた。覗き込めば、目に隈ができて、疲労感が漂っているのが見て取れる。
整えられた髪や髭も、どこか張りがないために、降り積もった疲れを隠せないでいた。
空堀と城壁が取り囲んだ城館の大門をくぐり、一行は、石垣と城壁がぐるりと囲んだ、虎の口に入った。城館とはいえ、立派な要塞でもあるようだ。
さらに門を通過すると、正面の館へと続く庭の通路を過ぎ、階段の前に馬車は駐まった。
階段は、少し高い館の入り口に続いている。
入り口の両開きの鉄扉をくぐると、吹き抜けの玄関ホールになっていた。代々の領主たちのものだろうか。どこか似た雰囲気の肖像画が、中央の銅像と一緒に一行を見おろしている。
その銅像の立派な髭の右側が折れてなくなり、掲げるべき右手は、折れて足下に立てかけてられいた。
! アコニが咄嗟に身構え、シュタールは「もはや打つ手がないってやつね」と、折れた銅像の右手と握手をした。
冒険者たちは、ここに、兵士たちの疲労の元凶を見た気がした。
床だけでなく、手すりから壁に至るまで、まるで戦いの後のような、破壊の跡があった。あるものは折れ、あるいは切り裂かれ、へこまされている。
腐った松ぼっくりのように、原形をかろうじてとどめたシャンデリアが、壁際にばらばらになった部品と共に放置されている。
ホール正面にある階段をなんとか上ると、謁見の間を兼ねた広間へとつづく大扉の前まで衛視たちに誘われた。
重厚な木製の両扉の片面は、無残に破壊され、出入り口の横にたてかけてある。
衛士のひとりが、応急処置のほどこされた扉を開けて、正面に進むよう丁寧に誘導した。
謁見の間の中は、玄関ホール以上の破壊のあとがあった。
小さな嵐が吹き荒れたように、全ての窓硝子は破れ、敷かれた絨毯も至る所が引き裂かれていた。
また、バリケードにしたと思われる、荷車や、板材が置いてあり、いつでも設置し直す準備が出来ている。
一段高くなった正面の玉座には、サラマンダー、即ち大サンショウウオを思わせるでっぷりとした巨漢が、くたびれた様子で座っていた。
オクスタム・ズレッド、即ちオゴフの街の領主だと思われた。
「騒々しいところを、悪かったわね」低い男の声が、女性的な口調で謁見の間に響いた。
うっすらと化粧が施された顔に、同様の、うっすらとした疲労の色が浮いていた。
蝶の羽を思わせる豪華な陣羽織に銀色の鎖帷子を纏い、兜の代わりにマーファの聖印を額にしめている。
「まぁ座って。それから、何か軽く食べる? お口に合えばいいんだけど」
語りかけながら、一行の言葉を待たずに椅子と小さなテーブル、軽食を衛視たちに用意させた。
ハトハの横で、このサンドウィッチすごく美味しいねと、オリーブの実を指でつまみながら、モゴモゴとシュタールは感想を漏らした。
「それで、あなた方は何をしに当館へおいでになったの?
あるいは、当領地に、というべきかしら?」
オクスタムも軽食、というには多い、皿に盛られた食事をヒョイパクと摂りながら、一行に質問をした。
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魔音@GMより:
謁見の間まで来ましたー。
オクスタム・ズレットとの話をするシーンです。
サンジェルミというよりはマツ○さん的なイメージで(サラマンダーは、精霊ではなくて生物の方をですね:ぁ
神聖隊はそのまんでっす。ぶひひ。
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